2009_05_09_[SAT]

『ネット媒体』が『電波媒体』とクロスしてきている現在を【現代芸人】の現象から捉えディスプレイの向こう側から適当に考察する。
奇才【現代芸人】シリーズ。【現象としての鳥居みゆき】に続き第二弾【通常型ウメ研究所--サブ・テキスト】。
【独自の世界観】と【キレのあるズレ】で見るものを笑いの【物悲しさ】世界へいざなう、 もうヒトリの奇才女芸人【ウメ】。
常に玄人ウケする一見しただけでは見抜けない奇才女コント師の放つ練りこまれたハイクオリティ「紙コント」を【通ウメ所】が勝手に分析と適当な考察する。
今回は、 【通常型ウメ】さんの【TV LIFE】版での紙コント『手術』 作者よりも詳しき解説エントリー。
【独自の世界観】と【キレのあるズレ】で見るものを笑いの【物悲しさ】世界へいざなう、 もうヒトリの奇才女芸人【ウメ】。
常に玄人ウケする一見しただけでは見抜けない奇才女コント師の放つ練りこまれたハイクオリティ「紙コント」を【通ウメ所】が勝手に分析と適当な考察する。
今回は、 【通常型ウメ】さんの【TV LIFE】版での紙コント『手術』 作者よりも詳しき解説エントリー。
ウメの紙コント『手術』 で味わう「新キプロクオ」現象。

【動画へ】


紙コントやります。
紙コント「手術」
たかし君どうしたの?
「先生、手術が怖い」
大丈夫だよ。楽しくやるから。
ほら見て!いーち、にー、
「先生、いたーい。」
おねがいしまーす。
いーち、にー、さーん。
先生、みぎ、みぎ。ひだり、ひだり。
「先生!こわーい」
------◆横筋01<順送り>≪設定は父のパラレルと息子のリアル≫ 『パラレル』の父親が「シュールボケ」で息子が『リアル』で返す「ベタ」オチ
紙コント「手術」
「お父さん、文鳥がいなくなった。」
文鳥ならここにいるよ。
ちゅん。ちゅん。ちゅんちゅん。
「やめてよー」
------◆本筋02<順送り>≪設定はリアル≫ 給食センター紹介の章。
見た目で「絵柄の違い」に 「ベタ突っ込み」オチ。
紙コント「手術」
はい。こんにちわー。
今日は『給食センター』を説明するよ。
みんな、あつまって。
はい。『給食センター』はこんな格好をしまーす。
そう。大きなシャモジで鍋をかき回しまーす。
じゃー野菜を切っていこうか。
「包丁が小ちゃいよー」
------◆本筋03<逆送り>≪設定はパラレル≫ 閻魔さまの章。
「舌を引っこ抜いてやろうかー」の「フリ」と「ページ絵柄の違い」に 「ベタ」突込み。≪ナイフでなくペンチという事≫
締めで帳尻を合わせていく 「ベタ」オチ。
紙コント「手術」
閻魔さまー、閻魔さまー、
「舌を引っこ抜いてやろうかー」
道具が違うよー。
閻魔さまー、こっち、こっち。
閻魔さまー、死人が来ました。
「よし。じゃぁ、鏡に映してみなさい。」
「ワタシを映してどうするかー。」
「はい、地獄」
------◆本筋01<順送り>≪設定は医者のパラレルと患者のリアル複合型≫
手術に臨む医者と患者の章。
手術に臨む『リアル』な患者の不安さを『パラレル』の医者が取り除こうと点滴チューブで縄跳びで楽しませようとする シュールな「ボケ」に医者が「いたーい。」と『リアル』で返す 「ズレ」笑い。 『パラレル』のシュールボケに「痛い」と『リアル』な突込みを2度続ける 「天丼」オチ。 |

紙コント「お礼」の構成は 【8ページ24コマ】-->【本筋3本+横筋1本の4章編成】-->【全体01分54秒(ネタ01分48秒)】≪1コマ約4.5秒≫
本筋3本はオチが「パラレル」での【シュールなボケ】。 そして、このシリーズを初めから読んでいる人は【通常型ウメ】さん特有の【ちょいサディズム】を利用した「ズレ」も 見ながら自然に汲み取れるようになってきていると思います。
----「紙コント」での「新キプロクオ」
【通常型ウメ】さんの「紙コント」では同じページを何度も繰り返して違う筋を作っていくと言う手法です。 この手法では構造的な 【キプロクオ】の可笑しきが生まれると『通常ウメ研究界』では言われています。
お笑いのテクニックを簡単に説明しておきます。 この概念は【ウメ】さん攻略では必須となりますから『脳内ウメ』を満たしたい方はバッチリ予習をしておきましょう。
「紙コント」での【キプロクオ】とは、 『同一絵柄』を2度以上繰り返す構成である為に、視聴者の頭にイメージが残り 違う設定で行っても『取り違い』のような効果を生むことである。通常、【アンジャシュ】さんなどが行う【キプロクオ】は別世界同士が並列に進み交差したり離れたりして【面白み】を 構成していきますが、【ウメ】さんの「紙コント」の場合は同じページを使い別の世界を作るという構造の為に 時間が巻き戻された状態になり、 『古い記憶が張り付いて新しい世界(本筋02)と古い世界(本筋01)とでキプロクオが発生』というような 特有の取り違い「新キプロクオ」現象が起こります。
図にすると

こういう感じになります。 そしてこういう「紙コント」特有のキプロクオを 「紙コント」での「新キプロクオ」 などとよんでいるようです。
実際に具体例を紙コント『手術』で見てみましょう。
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最初は、本筋01--手術に臨む医者と患者の章。の6コマ目です。
手術が怖い患者に楽しませると約束した医者が手術をする前に平衡感覚を無くす「グルグル」を『バット』でしている場面です。 次のコマでは当然フラフラになり患者に「先生!こわーい」と突っ込まれてオチとなります。
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いーち、にー、さーん。
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次は、本筋02--給食センター紹介の章。の17コマ目です。
給食センターの紹介で大きななべを『シャモジ』でかき回している場面です。 次の場面では野菜を切る包丁が小さいことを突っ込んでオチです。
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そう。大きなシャモジで鍋をかき回しまーす。
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そうです。頭の中でまだ「グルグル」した『バット』のイメージが残っているために視聴者の中では「取り違い」をしているような感覚になってしまうという効果が生まれるのです。
これは構成を立てることでできる「取り違い」はなく【通常型ウメ】さんが行う「紙コント」の同じページで筋を組み立ていく構造上こういう一種のキプロクオ効果を生みますから【ウメ研業界】ではこれを通常のキプロクオと区別して「新キプロクオ」と呼んでいます。
----「局地戦略現代芸人」オチコマ研究
今回も【ウメ機関】を熟成させる秘密訓練として『本筋02』給食センター紹介のコマで局地戦略「現代芸人」さん別にパターンを研究してみましょう。
【通常型ウメ】さんが行う「紙コント」では朴訥な『鹿児島なまり』も笑いを誘うヒトツのエッセンスとなっています。そして彼女を応援してくれるファンの方をみると やはり『鹿児島弁が懐かしかった』など地元は優しいです。
従って局地戦略でローカル色を前面に打ち出すとエッジが効き過ぎて 売れてから客層が広がりにくいというデメリットはあるものの売れてからの事は売れた後で良いのではないかと【ウメ研業界】では思われます。
今更ですが業界用語である【局地戦略現代芸人】さんというのは、少し前で言えば【はなわ】さん、今で言う【U字工事】さんなどをイメージしてもらえれば良いかと思います。
つまり、ランチェスター経営戦略で言う【弱者の戦略】により ローカル色をあえて出して地元のファン層を固めて全国に打っていくという売り出し手法です。
早速パターン研究を始めましょう。
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はい。『給食センター』はこんな格好をしまーす。
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そう。大きなシャモジで鍋をかき回しまーす。
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じゃー野菜を切っていこうか。
「包丁が小ちゃいよー」 |
まずこれが、紙コント「手術」『本筋02』給食センター紹介のモトコマです。それではこれを局地戦略でローカルエッジを効かせるとどうなるのかを 代表的な3人の美人【女性ピン芸人】さんで予想してみましょう。
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◆最初は、

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茨城のことみんなで馬鹿にして。茨城でも『給食センター』ではこんなハイカラな洋服でするんだかんな。
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おめーらいつまでもいつまでも調子んのってんじゃねーかんな。茨城の大きなシャモジは鍋をかき回すだけに使ってんじゃないんだかんな。
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茨城の包丁
石製。 |
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今回の3人のうち『赤いプルトニウム』さんが唯一、生のライブで見た女性ピン芸人さん。
同じ関東圏にありながら茨城という地域と東京という都市にある様々な相違を、定型にのせながら
つぶやく女性ピン芸人さん。
ネタの基本構成は、お亡くなりになられた人生幸朗師匠の「みなさん聞いてください!」という客席への「投げかけ定型」≪客席へ投げかける事で 舞台と客席の精神的な空間を意識的に縮めて笑いを起きやすくする技術≫と同じ系統の定型フレーズ≪ブリッジとしても利用≫が入った後に ベタ「ぼやき」やズレ「ボケ」で落とします。 口演はもちろん「茨城」だと思います。 数年前にライブで見たときは、それほど茨城ローカルな局地的エッジを利かせていないネタをされてましたが面白かったです。 現在は、売り出し戦略での局地戦を実践されまことに見事な茨城エッジが入っておられ益々面白くなっています。 |
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◆次は、

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まずはこちら。富山県の『給食センター』用割烹着消費量1位。
富山では割烹着も一般婦人服売り場で買うことができます。 |
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さらに。鍋をかき回す大きなシャモジ生産量 1位。
木が沢山あるので大きなシャモジ作り放題です。 |
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ちなみに小さな普通のシャモジ生産量 7位。
悔しいです。 |
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【TV演芸】のネタ番組で見ました。
富山の文字と魚の魚拓が入ったシュールなトレーナーを着こなして、富山県の情報を伝えながら漫談をされる女芸人さんです。
ネタの基本構成は、入りで「富山県民です。」という下地を宣言してから、 本当かどうか調べようと思えないような富山県の情報を発表し、自分のその「フリ」に対して ベタ「ボケ」やベタのり「突込み」で落としていきます。 口演は標準語に近い口調だと思います。 こちらの『長江もみ』さんも富山エッジが入っておられますが「ノリ突込み」時の口演も口調が富山ぽくない ≪富山っぽいがどういうものかはしりませんが≫のでドコまでがフリでどこからがノリに入っているのかというポイントが緩くなって シュールな感じに面白く仕上がっておられます。 |
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◆最後は、

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『給食センター』に行ったよ。逃がすなっちょ!
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そう。大きなシャモジでキュ、キュ。
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じゃー切り刻んでいくべ。
「包丁が小ちゃいさー」 |
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ご存知、北海道芸人の『飛んでん道35号』さんです。
屯田兵のいでたちで北海道弁?のウソ政治漫談と怪しい手品をされます。
政治や時事漫談の合間に北海道がらみの緩い手品が入ってきます。
ネタの基本構成は、レミントン銃を抱えながら『とんでん、とんでん、守りたい。』と行進で入り北海道弁で 北海道がらみの政治や時事話題を真実が2でウソが1ぐらいの割合で話しパラレルとリアルを絡めながら ズレ「ボケ」やズレのり「突込み」で落としていきます。 口演は北海道弁だと思います。 コンビ解散から最近、改名してピン芸人となられた『飛んでん道35号』さん、コンビ時代と同じで猛烈な北海道エッジが入っておられます。 ブログを読むと今後は売れる為に『POP』マジックでいかれるらしいです。 初めて見たコンビネタが【氷葬柱】でした。『網走では江戸時代から続く【氷葬】という死人を氷漬けにて葬る風習があり、今でも冬に食料が尽きるとそのカチコチの【氷葬柱】をカキ氷にして食べてる。足元から削るから初めは臭い。ひいおじいちゃんは現在は上半身だけになった。』 という彼女達のテイスト満載でした。 |
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【女芸人の県民ショー】があるならこの3人がブッキングされないのは間違ってます。
----紙コント「手術」の見所と味わい
高度な鑑賞として、 今回は【通常型ウメ】さんの代名詞「シュール」や構造としての「新キプロクオ」現象を感じて欲しいと思います。
まずは【通常型ウメ的シュール】とは何であるかを、研究員でない一般の方に「シュール」と同一のようにとらわれがちな「ナンセンス」との構造差を理解するにあたって 【現代芸】に関するお笑い分析の大家【井山弘幸】先生の説を引用しておくと
お笑いにおいて「シュール」とは「観客」がその先に何かを「見出そうとする」もの。 「ナンセンス」とは「観客」がそれを無意味と感じ「完結する」もの。つまり、【大木ひびき】師匠の「チッチキチー」の一連の流れは「観客」も意味は不明だがその中に再び意味を見出そうとせずそれだけで簡潔しているので「ナンセンス」となり、
【ムーディー勝山】さんの「左へ受け流すー」の一連の流れは「観客」は何を流しているのか不明だが、何かを流しているであろうものに意味を見出そうとする事も含めて笑いへと繋がるので「シュール」と分類されることになります。
そういう事からもちろん「リアル」設定の中で「シュール」も作り出せますが日常の状況認識では把握できない「パラレル」設定でネタの構成を作って行かれる方のほうが 「シュール」と分類されやすい事が理解できると思います。
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では、【通常型ウメ】さんの「紙コント」に特定しないで【フィリップ芸】を考えてみた場合、 普通はコント等でも【状況セリフ】という舞台設定の説明をする口演から入らないと見ている「観客」は どこで何が起こっているのかわかりませんから笑いに入る事ができにくくなります。
その【状況セリフ】に取る時間を短くする手法として芸人さんたちは補完する為の衣装であったりを利用し「観客」への状況認識スピードを高めるようにしているわけです。 ≪わかりやすい例が【髭男爵】さんの衣装による効果など。≫ つまり、逆に言うと看護婦であったりパイロットであったりと衣装で現せるもの以外は【状況認識の補完作用】が不可能に近いわけです。≪冷蔵庫マンは除く≫
しかし「紙コント」≪フィリップ芸全般≫の場合は口述なしで『画面として状況を説明できる』『設定キャラを浸透させやすい』という特性があります。 手術に臨む医者と患者の章。 これをもし口演だけで行うなら【状況セリフ】だけで成立させるなければいけないためにかなりの技術と時間を要します。
でも「紙コント」ではフィリップで「観客」に設定を画面で一瞬に認識させる事ができます。なので短いセリフ廻しの骨組みだけで成立し 「観客」に何か【バックラウンド】に意味が有るのではないかと想像させる一歩踏み込んだ構成もくどくなく作れるわけです。 従って笑いを仕掛けるポイントまでが短くてすむのでパラレルを何本も詰め込むこともできるのです。
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つまり、これらフィリップ芸の構造上「新キプロキオ」や「シュールになりやすい」特性と、 【通常型ウメ】さん特有の【ちょいサディズム】から生み出されている物悲しげな【短調リズム】から繰出すキレの良い【ズレ】がマッチし 【通常型ウメ】さんの「紙コント」は『面白い』という下地を作り出しているのです。
当然、たまたま【通常型ウメ】さんの芸風と「紙コント」というフィリップ芸の相性が良いというだけで、他の芸人さんが同じように行っても 当然同じようには化学反応を起こすわけではないのでそこが『芸人観察』で本当に面白いところです。
それらを踏まえながら【通常型ウメ】さんだけでなく芸人さんの特性を【芸域】と結びつけながら相性を感じながら観察および【通ウメ研】での知識を利用し 『この芸人さんは、こういう特性値なわけだから理論的に言うともっとこの芸域の方が科学反応を起こしやすいんじゃないか?』など考察をしながら ネタを見るのも楽しくなってくるはずです。
見所と味わいを踏まえた上で-->紙コント「手術」動画を見る
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